寒さは大敵 「脳梗塞」を意識しましょう

厳寒のこの冬、部屋や外出時の温度差は血圧が上昇しやすいので注意しましょう。特に「一過性脳虚血発作」を経験した方は脳梗塞を発症しやすいので前ぶれ症状を逃さず、症状が消えても異常を感じたならば早期に受診しましょう。脳梗塞は、血液を運ぶ脳の血管が何らかの原因で詰まって、血液が届かなくなった部分の脳細胞が壊死してしまう病気です。脳梗塞というと「防ぎようがない」、「後遺症が残る病気」などと思っている人も多いかもしれません。しかし危険因子に注意して日常生活を改善していけば、脳梗塞のリスクを下げ、予防する事ができる時代になってきています。また大きな発作を起こす前の“前ぶれ”の症状を理解し、早期に受診・治療すれば最小限の後遺症ですむようになります。

脳梗塞は「脳卒中」と呼ばれる病気の一種です。脳卒中は、血管が破れて起こる「脳出血」・「くも膜下出血」と、脳の血管が詰まる「脳梗塞」に分類されます。脳梗塞の種類は、起こる部位や原因によって3種類に分けられます。死亡率の6割は脳梗塞です。

@ラクナ梗塞(ラテン語で「小さな穴」と言う意味)日本人に多い。

細い血管が動脈硬化によって詰まる。梗塞の直径が15mm未満と小さく症状は比較的軽い。主な原因は高血圧、ほかに糖尿病、高脂血症。

Aアテローム血栓性脳梗塞(コレステロールが血管壁に入り込みお粥のような塊になった物)

太い血管が血栓によって詰まる。症状はさまざまだが、太い血管が徐々に詰まる場合は症状が軽い場合もある。主な原因は高脂血症でほかに高血圧、糖尿病。

B心原生脳梗塞症

心房細動などにより、心臓でできた血栓が、脳の血管に流されて詰まる。血管が突然詰まり、梗塞部も大きく、症状も重くなりやすい。主な原因は心臓病。

ご本人だけではなくご家族の方も前ぶれに注意しましょう。脳梗塞を起こした患者さんの中には、本格的な発作を起こす前に「前ぶれ症状」を経験しています。これは「一過性脳虚血発作」(24時間以内に消える脳梗塞の症状)と呼ばれ、小さな血栓が脳の血管に一時的に詰まり脳梗塞と同じような症状が現れるものです。しかしすぐに血流が再開するので持続時間は2〜15分程度で症状も消えてしまいます。前ぶれ症状とは、運動障害(左右どちらかの手足に力が入らない、動かせない、足がもつれる) 感覚障害(体の左右どちらかがしびれる、熱さや痛みなどの感覚がない)平衡障害(めまいが起きて立っていられない)言語障害(ろれつが回らない、話したい言葉が出てこない)視力障害(物が二重に見える、視野の半分が欠ける、片方の目が見えないなど)嚥下障害(ものを上手に飲み込めない、むせたりする)

次に、日常生活での注意点を考えてみましょう。高血圧、糖尿病、高脂血症、また心房細動などの心臓病のある方は、食事療法、運動療法や内服薬の服用など、医師の指示に従ってコントロールしましょう。特に高血圧のお薬は服用を勝手にやめては絶対にいけません。

食生活では、脂肪や塩分の取りすぎに注意し、腹八分目を心がけ適正なエネルギー量の食事を心がけましょう。魚の油、アジ、サバ、イワシなどに多く含まれるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸は血栓をできにくくする効果があるので、ぜひ食事のメニューに取り入れて下さい。また、肥満を防ぎ、体の血流をよくするために、ウォーキング、水泳などで体を動かすようにしましょう。タバコに含まれる有害物質は動脈硬化や血管の収縮を起こすため、禁煙か減煙を心がけ、飲酒は1日に日本酒なら1合、ビールなら大ビン1本程度にしましょう。お風呂のお湯の温度は38〜40℃のぬるめにし、長湯はさけましょう。できれば半身欲にしましょう。全身欲をされる方は浴槽からでる前に胸まで一度出てからゆっくりと浴槽からでましょう。のどが渇いたら水分補給します。冬だけではなく夏は汗をかいて脱水状態になりやすく、血液が濃くなり血栓ができやすくなるので、定期的な水分補給をして下さい。心臓病の人は、水分量については医師の指示に従う必要がありますのでご相談下さい。健康な方も定期的な検査を心がけ、気になる症状があるときには必ず医療機関で相談しましょう。脳卒中、特に脳梗塞の診断を行うには、通常CTの撮影とMRIの検査のほかMRA(MRによる脳血管撮影)脳血流SPECT検査という核医学検査により脳の血流状態を調べるものがあります。最近では、短時間で被爆量も少ない16チャンネルマルチスライスCTが威力を発揮しているようです。海外にてカイロプラクティックの頚椎のテクニックにより脳梗塞を起こしたという一例があったとの報告がありましたがカイロプラクティックによるものではありませんでした。但し、よく精査して治療をすることは当然です。そのため当会JCOの「全国統一カイロプラクティック師免許試験」の実技試験は「テクニック(手技)」だけではなく整形外科的テストに準ずる「オーソペディクテスト」「徒手筋力検査」「神経学的検査」「体幹計測」が重要視されています。

写真:「正常画像と並べてわかる頭部MRI―ここが読影のポイント」杏林大学医学部放射線科土屋一洋ほか羊土社発行2,730円(税込)